革ができるまで|革職人の仕事(前編)「なめしの工程」
動物の皮は数多くのさまざまな工程を経て、私たちが使う革製品へと新しく生まれ変わります。そこには革職人(タンナー)たちが長い年月をかけて磨いてきた技術と経験と努力の結晶があります。「皮」から「革」になるまでにはどんな作業工程があるのか、タンナーたちの仕事をわかりやすくお伝えします。植物タンニンなめしについて、前編では「原皮からなめし」までの工程、後編では「加工から染色」までの工程をみていきます。どうぞお楽しみください。
1. 塩漬けで劣化を防ぐ
原皮(未処理状態の皮)は、年2回イスラム教の大きなお祭「イード」にて捧げられた牛の皮を使用しています。本革製品を作るために、牛の皮を剥いでいると思われている方も多いかと思いますが、決してそんなことはありません。その後、腐らないように塩着けされた状態で革工場へ到着します。加工直前まで倉庫で保管されます。
2. 水漬けで生皮へ
塩漬けされた状態の皮は、動物の毛や汚れなどが付着しているため、これらを水で洗浄しきれいにします。同時に抜けてしまった水分を補い、生革の状態へ戻します。この工程は1日かけてじっくり行います。これにより、後の工程がスムーズに運びます。
3. 背割りで加工しやすくする
皮は一頭単位にてバングラデシュ現地から仕入れます。牛や馬などの面積の大きい皮を加工しやすくするために、背骨に沿って皮を半分に分けます。背割りは各タンナーによってタイミングが異なります。
4. 石灰漬けで脱毛
原皮を石灰に漬け、コラーゲン繊維をほぐしていきます。 石灰乳に浸漬させ、原皮に残っている毛や脂肪を除去していきます。 同時に皮へ柔軟性も与えます。このとき、毛を除去した面が皮の表面となり「銀面」と呼ばれます。
5. 裏打機で汚れを落とす
石灰漬けで脱毛を終えたら、裏打機(レッシングマシン)という専用の機械で、皮の裏面に付着している余分な脂肪分や汚れを削ぎ落としていきます。場合によってはこの過程で皮の厚みを整えるケースもあります。
6. 再石灰漬けと酵解で柔らかく
再び石灰漬けにすることで皮のコラーゲン繊維をほぐします。 特に、柔らかな風合いが求められる革や、スエード調の革を作る場合に必要不可欠な工程です。
石灰漬けでも除去できなかった脂肪や汚れなどを、 酵解(ベーチング)という工程で分解除去します。 これにより銀面がなめらかに整います。
7. なめし「皮」から「革」へ
なめしとは、皮のコラーゲン繊維になめし剤を結合させ素材を変化させることです。 これにより「皮」から「革」へ生まれ変わります。
植物タンニンなめし
植物から抽出したタンニン(渋み)を使用します。 植物タンニンなめしは、タンニン液の薄い層から濃い層に皮を順々に移しながら、徐々にタンニンを皮になじませていくピット製法と、ドラムの中にタンニン液と皮を入れて回転させ、短時間でタンニン液を浸透させるドラム製法があります。
8. 水を抜き、脂分で柔らかくする
なめしが終わったら、革に残った余分な水分をしぼります。 しぼり終えた革の品質を確認します。キズなどの具合や革の状態によっては再なめしする場合もあります。その後、油脂を加えて革を柔らかくしなやかにしていきます。 革に光沢や艶、耐水性を与えます。
〇 前編のまとめ
ヌメ革というと「何も加工していない素の状態の革」というイメージに捉えられているケースがありますが、ご覧いただいた通り、原皮から実にさまざまな工程(なめし)を経てはじめて「ヌメ革」となります。むしろ、革職人の熟練の技術が施されているからこそ、あの美しい薄茶褐色の風合いができるといってもいいでしょう。後編ではいよいよ革に色を入れていきます。後編もどうぞお楽しみください!
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