革の美しさを引き出す熟練の技とは?|革職人のさまざまな手仕事
革製品の魅力は、革の美しい風合い、味わいが深まる経年変化などの、革素材そのものだけではありません。革製品のデザインに、素材をバランスよくなじませ、また使うときにストレスを感じないように、細部を整えることで完成されます。今回は革製品のクオリティーを高める革職人のさまざまな熟練技をご紹介します。
〇 コバ磨き(コバ塗り)
革を製品に仕立てる際に裁断した革の断面を「コバ」とよびます。革をカットしたままの状態は、その断面にざらつきがあり木目ように見えることから、「木端(コバ)」と呼ばれるようになりました。このコバの部分をそのまま製品にすることはなく、私たちが目にするものは「コバ磨き」という作業により、革の断面がきれいに仕上げられた状態のものです。
コバ磨きは、まず革の断面に水を含ませた帆布や、目の細かいサンドペーパーで、断面を均一にならしていきます。その後、食品添加物や医療品にも用いられるCMCと呼ばれる薬剤を、断面に塗り布で磨き上げます。銀面(革の表面)と色合わせのために染色したり、触感を固めたり、革の質感を見極め仕上げていきます。入念にコバ磨きを施すと、上品さを帯びた印象へ格上げされます。
地道な作業ですが、コバ磨きを美しく整えることで革製品の印象が大きく変わる重要な工程です。
ヘリ落とし
ヘリ落としとは、革を裁断した断面部分「コバ」に、丸みをつけていく作業です。コバの角をとり丸めると、なめらかな手触りにする作業です。また、表面の仕上がりも美しく見え高級感が増します。ヘリ落としには、専用の刃物を使います。
ヘリ漉き
ヘリ漉きとは、革の端コバの部分の厚みを調整する作業です。革が重なり合う箇所の厚みを均一にしたり、丸みを帯びさせたりする処置です。ヘリ漉きは製品の状態からは見えない箇所に施されているので確認できませんが、仕上がりの良し悪しを決める重要な工程です。ヘリ漉きには大きく分けて「斜め漉き」「ヘリ返し」「溝漉き」の3つあり、用途や製品の仕上がりによって使い分けます。
〇 捻(ネン)引き
ネン引きとは、コバ処理工程のひとつです。革製品のコバ(フチの部分)に直線の溝をつけることで、この溝を飾りネン(レザーエッジクリーサー)と呼ばれます。革を縁取るように入った溝は立体感を増すとともに、革の表情を引き締めます。飾りネンは、品質の高い革製品に施されていることが多いです。
コバ部分にきれいなネンを入れるためには、職人の高い技術が求められます。ネンをつける道具には「玉ネン」や「ネジネン」といったものが数種類あり、使う道具によって、微妙にネンの形状が変わってきます。
〇 まとめ
革製品は、使われている革の素材の良し悪しだけでなく、細かい箇所にまで職人の高い技術による手仕事が注がれています。「神は細部に宿る」という言葉がありますが、革職人がコツコツと施した地道な手仕事の積み重ねが、革製品のデザイン、素材感と一体化してその魅力を放つと言ってよいでしょう。
あなたのお手元の革製品はどんな表情をしていますか?いろんな角度から見て触れて、革職人の手仕事を見つけその細かい部分のこだわりを感じ取ってください。
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